こんにちは、FPの詠子です。今日は社会保険の世界の「ものさし」である、標準報酬月額のお話です。ちょっと地味な言葉ですが、実はあなたのお金にとても深く関わっているんですよ。
給与明細から引かれる健康保険料や厚生年金保険料。病気で働けないときの傷病手当金。医療費が高額になったときの自己負担の上限。そして将来の年金額。これらはぜんぶ、あなたの「給料そのもの」ではなく、「標準報酬月額」という共通のものさしで計算されています。この言葉さえ分かれば、社会保険の話がぐっと読みやすくなるので、今日でまるごと整理してしまいましょう。
標準報酬月額は「社会保険の世界」のものさしです。よく似た言葉が並ぶ「税金の世界」のものさし(収入・所得・課税所得)は、収入・所得・課税所得の違いって?で整理しています。2つの世界を分けて考えるのが、お金の勉強のコツですよ。
📏 標準報酬月額とは?
標準報酬月額とは、毎月の給与(報酬月額)を、あらかじめ決められた等級表に当てはめて「キリのいい金額」に置き換えたものです。給与は人によって1円単位でバラバラなので、そのままでは保険料や給付の計算が大変です。そこで一定の幅ごとに区切って、代表の金額で扱うしくみになっています。
例:月給が29万円(基本給+残業代+通勤手当など)の方の場合
→ 「29万円以上31万円未満」の等級に当てはまるので、標準報酬月額は30万円
等級の数は制度によって少し違い、健康保険は第1級(5万8千円)から第50級(139万円)まで、厚生年金保険は1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までに分かれています。どんなに給与が高い方でも、厚生年金の計算上は65万円が上限として扱われる、ということです。
🗓️ いつ・どうやって決まるの?(定時決定)
基本のルールはとてもシンプルで、毎年4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額で決まります。この手続きを「定時決定」といい、そこで決まった標準報酬月額がその年の9月から翌年8月までの1年間使われます。
STEP1
4〜6月の報酬を平均
STEP2
等級表に当てはめる
STEP3
9月〜翌8月に適用
よく「4〜6月に残業しすぎると社会保険料が上がる」と言われるのは、このしくみが理由です。残業代も報酬に含まれるので、この3か月にたまたま残業が集中すると、1年間の保険料のベースが高めに決まってしまうんですね。ただし、業務の性質上4〜6月だけ毎年忙しいような場合には、年間の平均で算定してもらえる例外的な手続きも用意されています。
また、年の途中でも見直されるケースがあります。
- 随時改定:昇給や降給で固定的な賃金が変わり、その後3か月の平均が従前と2等級以上ずれた場合、定時決定を待たずに改定されます
- 資格取得時決定:入社したときは、その時点の報酬の見込みで決まります
💰 「報酬」に含まれるもの・含まれないもの
ここが一番の誤解ポイントです。標準報酬月額のもとになる「報酬」は基本給だけではなく、働くことの対価として会社から受け取るものほぼすべてが含まれます。
| 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 基本給/残業手当/通勤手当/住宅手当/家族手当/役付手当など各種手当/社宅や食事などの現物給与/年4回以上支給される賞与 | 年3回以下の賞与・ボーナス(「標準賞与額」として別枠で保険料計算されます)/結婚祝金など臨時に支払われるもの |
意外に思われがちなのが通勤手当です。所得税の世界では一定額まで非課税ですが、社会保険の世界では報酬に含まれます。定期券代を数か月分まとめて受け取っている場合でも、月割りで報酬として扱われます。「税金の世界」と「社会保険の世界」でルールが違う典型例ですね。
🔎 自分の標準報酬月額の調べ方
3つの方法があります。上から順に試してみてください。
- ① 会社からのお知らせを見る:定時決定の後(秋ごろ)、標準報酬月額の決定通知の内容が会社経由で知らされます。人事・総務に聞けば確実です
- ② 給与明細から逆算する:給与明細の「健康保険料」の金額を、ご加入の健康保険(協会けんぽなど)の保険料額表と照らし合わせると、ご自身の等級が分かります
- ③ ねんきんネット・ねんきん定期便で確認する:厚生年金の標準報酬月額の記録を確認できます
🧭 この数字、こんな場面で使われます
標準報酬月額が分かると、次のようなお金の話が一気に読み解けるようになります。
- 毎月の保険料:健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上)は、標準報酬月額に保険料率を掛けて計算されます(会社員なら会社が半分負担してくれていますよ)
- 高額療養費の所得区分:お勤めの方の医療費の自己負担上限(区分ア〜オ)は標準報酬月額で判定されます。詳しくは高額療養費制度とは?をどうぞ
- 傷病手当金・出産手当金:働けない間の生活を支える給付の金額は、標準報酬月額をもとに計算されます(※過去1年間の平均から出すなど少し詳しいルールがあります。詳しい計算方法の記事は準備中です)
- 将来の厚生年金額:現役時代の標準報酬月額(と標準賞与額)の記録が、老後の年金額に反映されます
🔍 ものさしが分かったら、試算してみましょう
🌸 高額療養費シミュレーター 🌸
ご自身の標準報酬月額が分かったら、もし医療費が高額になったときの自己負担の上限額を確認してみましょう。所得区分と医療費を入力するだけで、戻ってくる金額まで試算できます。
高額療養費シミュレーターを使ってみる →🎀 まとめ
標準報酬月額は、毎月の給与を等級表に当てはめた「社会保険の世界のものさし」です。基本は4〜6月の報酬の平均で決まって9月から1年間使われ、残業代や通勤手当も含めて計算されます。保険料だけでなく、傷病手当金や高額療養費、将来の年金まで、この数字が計算の起点になります。まずはご自身の標準報酬月額がいくらなのか、給与明細やねんきんネットで一度確認してみてくださいね。
📚 参考文献