🌸 こんにちは、詠子です。医療費控除のお話をしていると、「医療費控除で所得税や住民税が安くなるなら、健康保険料や国民健康保険料(国保)も安くなるのかな?」というご質問をよくいただきます。実はここ、勘違いしやすいポイントなんです。今日は「医療費控除で安くなるもの・ならないもの」を、一緒にゆっくり仕分けしていきますね。
医療費控除で軽くなるのは「所得税」と「住民税」の2つ。健康保険料・厚生年金保険料・国民健康保険料・介護保険料は、変わらないんです。
「控除で所得が減るなら、所得で決まるものはみんな安くなりそう」と感じますよね。私も最初はそう思っていました。でも、税金と社会保険料では計算のスタート地点が違っているんです。この記事では、その仕組みと、子育て世帯に関係する「例外」までご紹介します。
💡 医療費控除のキホン
医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えたとき、その超えた分を所得から差し引ける「所得控除」です。差し引かれるのは税金を計算するときの所得で、医療費そのものが戻ってくる制度ではないんですね。基本から知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
👉 医療費控除とは?仕組みをやさしく解説
早見表:医療費控除で「下がるもの」「下がらないもの」
まずは全体像を一覧でどうぞ。
| 項目 | 影響 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| 所得税 | ○ 下がる | その年の分が軽減(会社員は還付という形で現れます) |
| 住民税 | ○ 下がる | 翌年度分が軽減(翌年6月からの住民税に反映) |
| 健康保険料(会社員) | × 変わらない | 4〜6月の給与で決まる「標準報酬月額」がもとになるため |
| 厚生年金保険料 | × 変わらない | 同じく標準報酬月額がもとになるため |
| 国民年金保険料(第1号) | × 変わらない | 所得にかかわらず定額のため |
| 国民健康保険料 | × 変わらない | 計算で差し引けるのは基礎控除43万円のみのため |
| 介護保険料(65歳以上) | × 変わらない | 合計所得金額や住民税の課税状況で段階が決まるため |
| 保育料(0〜2歳児クラス) | △ 下がる可能性 | 住民税の所得割額で階層が決まるため(後述) |
どうして社会保険料は変わらないの?
理由をひとことで言うと、社会保険料は「課税所得」から計算していないからなんです。所得控除が効くのは、税金の計算ルートだけ。立場ごとに見てみましょう。
会社員の健康保険料・厚生年金保険料
会社員の保険料は「標準報酬月額 × 保険料率」で決まります。この標準報酬月額は、原則として毎年4月・5月・6月に支払われた給与の平均から決められ、その年の9月から翌年8月まで適用されます(定時決定といいます)。
つまり保険料を決めているのは「春のお給料の額」なんですね。年末調整や確定申告で計算する課税所得は、ここには関わってきません。医療費控除に限らず、扶養控除でもiDeCoの掛金控除でも、所得控除で会社員の社会保険料が変わることはない、というわけです。
個人事業主の国民健康保険料
「国保は所得で決まるのだから、控除も効くのでは?」と思った個人事業主の方もいらっしゃるかもしれません。ここは少し意外に感じるところなんです。
国民健康保険料の所得割は、多くの自治体で次のように計算されます。
(前年の総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 所得割率
※青色申告特別控除を受けている方は、控除後の所得が総所得金額等に含まれるため、青色申告特別控除は国保の計算にも反映されます。
※基礎控除の金額(43万円)は、税制改正により変わることがあります。
差し引けるのは基礎控除43万円だけで、医療費控除をはじめ、扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除といった各種所得控除は適用されない仕組みになっています。「所得で決まる」のは本当なのですが、税金の計算に使う「課税所得」とは別の金額から計算されているんですね。
65歳以上の介護保険料
65歳以上の方の介護保険料は、ご本人の合計所得金額や住民税の課税・非課税の状況をもとに、自治体ごとの所得段階に当てはめて決まります。こちらも判定に使われるのは所得控除を引く前の金額が中心なので、医療費控除で保険料の段階が動くことは基本的にないんです。
📝 計算例:課税所得300万円の会社員・医療費控除20万円の場合
・所得税の軽減額:20万円 × 税率10% = 約2万円
・住民税の軽減額:20万円 × 税率10% = 2万円(翌年度分)
・合計:約4万円の軽減
いっぽう、健康保険料・厚生年金保険料の変化は 0円。医療費控除の効果は、税金の側で完結するかたちです。
※所得税は復興特別所得税を含めると20万円 × 10% × 1.021 = 20,420円です。
子育て世帯の例外:保育料は下がることも
ここで、ひとつ知っておきたい例外があります。認可保育施設の保育料(0〜2歳児クラス)です。
保育料は、保護者の市町村民税の所得割額を合算した金額で階層が決まる仕組みです。医療費控除で住民税が下がるということは、この所得割額も下がるということ。もし金額が階層の境目をまたげば、保育料も下がることがあるんです。
「税金のほかは変わらない」なかで、ここだけは間接的に家計に効いてくるところ。医療費がかさんだ年に出産・育児が重なったご家庭は、確定申告をする価値がいっそう高いと言えそうですね。
⚠️ 保育料の補足
・3歳児クラス以上は幼児教育・保育の無償化の対象なので、この話は基本的に0〜2歳児クラスに限られます。
・階層の区分や金額は自治体ごとに異なります。境目をまたぐかどうかは、お住まいの自治体の保育料表でご確認くださいね。
・なお、住宅ローン控除のような「税額控除」は、保育料の計算では適用前の所得割額を使う自治体が多いようです。医療費控除は「所得控除」なので、こちらは反映されます。
医療費控除と社会保険料で知っておきたい3つの注意点・メリット
その1:国民健康保険(国保)でも、医療費控除で来年の保険料は下がらない
上で見たとおり、国保の所得割の計算で差し引けるのは基礎控除だけです。個人事業主の方は「税金は軽くなるけれど、来年の国保はそのまま」と資金計画に織り込んでおくと安心です。
その2:住民税の軽減は「翌年6月から」
確定申告をしてすぐ効果が出るのは所得税のほう。住民税の軽減は翌年度分に反映されるので、効果が現れるタイミングには半年ほどのズレがあります。会社員の方は、6月ごろに会社から配られる「住民税決定通知書」の所得控除の欄を見ると、医療費控除が反映されているか確認できますよ。
その3:保険料が変わらないのは、悪いことばかりでもない
会社員の標準報酬月額は、将来の年金額や傷病手当金の計算のもとにもなっています。保険料が下がらない代わりに、給付の土台も守られている、という見方もできるんですよ。
ご自身の医療費でいくら税金が軽くなるかは、シミュレーターで確認できます。
所得税と住民税の軽減額を、まとめて概算しますよ。
効くところ 効かぬところを 見極めて
-詠子-
まとめ
医療費控除で軽くなるのは、所得税(その年)と住民税(翌年度)の2つ。健康保険料・厚生年金保険料・国民健康保険料・介護保険料は、計算の仕組みが課税所得と切り離されているため、変わりません。例外は保育料で、住民税の所得割額が下がることで階層が下がる可能性があります。「どこに効いて、どこに効かないか」を知っておくと、医療費がかさんだ年の家計の見通しが立てやすくなりますよ。医療費控除は「税金を軽くする制度」であって、「社会保険料を軽くする制度」ではない。ここだけ覚えておけば大丈夫です。
📚 参考文献
・国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
・日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
・厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html
・江東区「国民健康保険料の計算方法・試算シート」(自治体の計算例)
https://www.city.koto.lg.jp/250102/fukushi/kokumin/hokenryo/20170201.html
・小金井市「認可保育施設における保育料の算出方法について」(自治体の計算例)
https://www.city.koganei.lg.jp/kosodatekyoiku/hoikuen/hoiku-nyuusyo/riyoushahutangaku/hoikuryosansyutsu.html