こんにちは、FPの詠子です。今日は「亡くなったご家族の医療費、誰が医療費控除の申告をするの?」という、大切だけれど見落としがちなテーマについてお話しします。
ご家族を亡くされた直後は、悲しみの中で相続の手続きに追われることになります。実は、その中に医療費控除に関する見落としやすいルールがあります。今日は、亡くなった後に支払った医療費の扱いを整理します。
医療費控除は、本来「税金がかかる対象の金額(所得)を引き下げる制度」です。仕組みの全体像は、まず医療費控除とは?基本の仕組みで詳しく解説しています。 また、分からない用語が出てきたら、医療費控除の用語集もあわせてご覧ください。
📋 亡くなった方の確定申告は「準確定申告」といいます
確定申告をすべき方が年の途中で亡くなった場合、相続人が代わりに、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得と控除について申告します。これを「準確定申告」と呼びます。期限は原則として、相続の開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から4か月以内です。
✅ 「亡くなる前に支払った医療費」は準確定申告の対象です
亡くなった方が、生前(死亡日当日までに)実際に支払いを済ませた医療費は、亡くなった方自身の準確定申告における医療費控除の対象になります。
⚠️ 「亡くなった後に支払った医療費」は対象外です
ここが今日一番お伝えしたいポイントです。所得税の医療費控除の対象になるのは「その年中に実際に支払った金額」に限られるため、亡くなった後に相続人が支払った医療費は、たとえ亡くなった方の遺産(相続財産)から支払ったものであっても、亡くなった方の準確定申告の医療費控除には含められません。入院加療中に亡くなり、死亡後に病院から医療費を請求されて精算した、というケースが典型例です。
👨👩👧 死亡後に支払った医療費は「支払った相続人」の医療費控除になります
では、亡くなった後に支払われた医療費はどうなるのでしょうか。国税庁の見解では、治療を受けた時点(=医療費を支出すべき事由が生じた時点)で、亡くなった方と生計を一にしていた相続人がいれば、その相続人自身の確定申告で医療費控除を受けられます。「生計を一にする」関係は、支払い時点ではなく、あくまで治療を受けていた時点の状況で判断される、という点がポイントです。
つまり、生計をともにしていたご家族(相続人)が死亡後に支払った場合は、その相続人の医療費控除として申告できますが、別居していて生計が別だった相続人が支払った場合は、誰の医療費控除にも含めることができなくなってしまいます。支払う人を誰にするか、注意が必要です。
⚠️ その他の注意点
- 死亡診断書の発行費用:治療のための費用ではないため、所得税の医療費控除の対象にはなりません(ただし、相続税申告における債務控除の対象にはなります)。
- 未収の保険金・高額療養費:亡くなった時点でまだ受け取っていない保険金や高額療養費(死亡後に確定するものなど)がある場合、準確定申告の医療費控除の計算上も、該当する医療費からその金額を差し引く必要があります。
- 相続税の債務控除との関係:死亡後に支払った医療費(死亡時点で未払いだったもの)は、支払った相続人の「医療費控除」にできると同時に、相続税申告における「債務控除(遺産総額から差し引ける債務)」として両方でダブル適用することが認められています。これらは二重控除にはあたりませんので、相続税がかかる方は双方で忘れずに手続きしましょう。
🔍 準確定申告での軽減額を確認しましょう
亡くなった方が死亡日までに支払った医療費で、準確定申告における軽減額を確認してみましょう。
🎀 まとめ
亡くなった方が生前に支払った医療費は準確定申告の医療費控除の対象、死亡後に相続人が支払った医療費は、治療を受けた時点で生計を一にしていた相続人自身の医療費控除の対象になります。死亡診断書の費用や未収の保険金の扱い、相続税の債務控除との組み合わせにも注意しながら、正しく申告してくださいね。
📚 参考文献